IQが1のD進

この記事はIQが1 Advent Calendar 2017 (http://adventar.org/calendars/2377) の13日目の記事です。


D進=大学院博士後期課程への進学について書きます。
だいたい理工系(特に情報系)を想定してます。医歯薬系・文系はよく知りません。


・D=博士後期課程ってなに?
▶︎修士課程の後にさらに3年間ほどあるやつです。


・大学の後の修士の後にまだ何すんの?
▶︎研究をしたり、専門分野の教育を受けます。世界の最先端の研究を行い、まだ誰も知らない未知の発見を学術誌の論文や博士論文=博論=D論という形で世界中の人々に教えてあげることを目指します。


・どうしたらD進できるの?
▶︎願書を出して入試を受けてください


・どうしたら卒業(修了)できるの?
▶︎博士後期課程は、学位=博士=Dを取得することが目的です。Dが取れたら修了です。Dが取れないけど講義の単位だけ揃えて課程を辞めることを単位取得満期退学とか言います。戦略的にこのルートを選ぶ人もいますが、割愛します。


・どうしたらDが取れるの?
▶︎いくつかの敵を倒すとDが取れます。


・敵とはなんですか?
▶︎大学・学科(部局)等で決まりはバラバラですが、ほとんどの学科では学術雑誌に論文を1本以上掲載する必要があります。どんな雑誌でも良いわけではなく、査読があり、英文誌であることが大前提です。ただし、国際会議のプロシーディングでも良い場合もありますし、レター論文という3〜4ページくらいの短い論文は認められないこともあります。3本くらい求められる学科もあるようです。


・査読とはなんですか?
▶︎誰かがあなたの論文を読んで、おかしいところがないか確認します。


・ほかに敵はいますか?
▶︎審査があります。卒論発表の長い版とでも思ってください。一般的に行われるD論発表会=公聴会=ディフェンスだと、だいたい60〜90分だと思います。


・(ストレートで)26,7歳にもなって学生は…
▶︎周りは就職してしまって焦るかもしれませんが、Dで実力をつけてから就職するのもありだと思いますよ。


・いやいや、Dからじゃ就職できないよ
▶︎そんなことはありません。多くの企業がD卒生の採用を行っています。


・でもお金無いし
▶︎学振という制度や、RA等の制度が充実してきています。修士から就職した人と比べるとそこまでは稼げませんが、大学に通って研究してお金がそれなりに貰えます。


・生涯年収減るじゃん
▶︎修士に行かずに学部で就職した人と修士課程を比べたら学部で就職した方がおそらく上なので、それはそう、としか言えないですが、逆転の可能性もあると思いますよ。


・大学の先生にはなれるの?
▶︎企業の就活と同じく実力と運で左右されるので難しいですが、頑張ればなれると思います(個人の感想です)。


・どんな人がD進に向いてるの?
▶︎研究が好きなら是非。世界の人々の知にあなたの新しい発見を刻みましょう。


・D取ったら研究職しかないの?
▶︎そんなことないです。開発や営業やってる人だっています。研究に広く関係するものとして、ジャーナリストや作家、役人、出版社などに行った方でD持ちの方も多くいます。政治家にもDいますね。


・でも大変そう
▶︎たしかに大変かもしれませんが、Dを取ったという経験はあらゆることへの自信に繋がります。貴重な20代を、と思うかもしれませんが、貴重な20代に投資した、という考え方もできると思います。


・その他
(AC担当日まで、twitterで質問が来たら随時ここに記載します)


+ + 以下追記 + +


・Dで研究室を変える/研究テーマを変える場合に覚悟しておくべきことは?
▶︎論文をどう出していくか、指導教員とよくよく相談しましょう。M→Dと続けてきた学生は、修士時代の研究をそのままDの間に論文にし、Dの論文カウントに加えたりすることができますが、Dで研究テーマが変わった場合にはそれが通用しなくなります。論文が2本要るなら、少なくともD2の夏に1本投稿、D3の夏にもう1本と進めていかないと3年を超える恐れもあるでしょう。


・あと、修士の時に書いたプロシーディングってDで業績カウント出来たりするんですか!?
▶︎カウントできる場合があります。修士+博士後期の5年間で博士課程という考え方があるためです。ただし、扱いは大学・部局によりますので、指導教員にご相談を。


・学振取れない場合の収入源をどうするか
▶︎学振が取れれば月20万のお給料が貰えますが、競争率も高いので、取れなかった場合の話になります。
似たような助成をしている財団等に申請する、理研JRA産総研RAといった制度に申請するなど、いくつか手はあります。また、大学でTA/RAとして学生を雇用して給料を出すということもやっていると思います。大学RAの場合、原資は指導教員の研究費だと思うので、そこも指導教員と相談してみてください。


・D進する人って大体半年くらい留学してるイメージがありますが、一般的?
▶︎半々くらいかなと思います。私は留学をしたことがないので、羨ましくも思いますが、必ずしも留学経験がないといけないわけではないです。ただし、経歴(就活等)としては留学はプラスに働くことの方が圧倒的に多いです。


・結婚しなくてDに耐えられるでしょうか
▶︎猫を飼いましょう🐱


・課程博士社会人博士と論文博士の違い(取得難易度や価値の違いなど)
▶︎論博の方が難易度は圧倒的に上です。確かなことは言えないですが、多くの部局で論文数で倍くらいの要件があると思います。


・課程博士社会人博士論文博士において,D論における研究の一貫性/大テーマとはどれくらいの広さが求められるor認められるのでしょうか?
▶︎基本的に課程博士や社会人博士の関係なく、D論は1つのテーマとして完結していないといけません。一貫したストーリーが描けることもDの要素だと思います。


・社D時に修士と同じ方向性のテーマでD論を書く場合,修士のときの査読付きジャーナル論文などは使えるのでしょうか,という点について人により意見が異なることがあるようですが指導教官の意見が支配的とみるのがよろしいでしょうか?
▶︎指導教員+副査の先生方、要するにD論審査員の意向がほぼ全てです。部局での慣例もあるかもしれません。事前に指導教員に聞いておくと良いです。


・一貫性の定義とそれの評価は同分野の現物の博士論文が参考になるのでしょうか?
▶︎例えばテキトウな例ですが、自然言語と音声情報とで機械学習を適用したD論とかあるかもしれないです。手法開発という側面でサーベイしてストーリー付けしてるとか、なんらかの一貫性があるかと思います。多くの大学はウェブでD論を公開しています(数年前にウェブ公開が義務付けられました)。


・恋人・配偶者が存在しないとして,そういう人を作ろうとするつまり恋愛をするというのは,逆に(特に男性は)キケンと伺ったことがありますが,どうでしょうか?
▶︎個人の感想の域を超えないのですが、恋人のために感情が揺れ動くことは研究の上でも良い効果があるかもしれません。もちろん、恋愛なんかにうつつを抜かしている暇があれば研究しろ、という意見もあるかもしれないですが、プライベートはプライベートで切り分けて考えられる方が、今後の人生に良い方向にはたらくと思います。